はんこを押す、その理由

そもそもですが行政や金融機関などの各種手続きでなぜはんこが必要なのでしょうか。
ほとんどの方が「なぜ書類にはんこを押す」のか、きちんと理解されていないと思います。
押印の見直しを論ずる前に、押印の意味を理解しているか確認をしていきましょう。

皆さん、運転免許証で本人を確認をし、その上で押印を求められた事があるかと思います。
はんこを忘れた時に「本人がいて身分証明までしているのに!」と言う疑問が生まれています。
これは「押印は本人確認」と言う誤解でして、そもそもはんこに本人確認機能はありません。
鈴木と言うはんこを持っている方が鈴木さんとは限りませんよね。

では、なぜ本人確認機能もないのに押印を求められているのか。
それははんこには意思の確認、意思の担保という重要な役割があるからです。
様々な手続きや契約では契約相手が本人であること、そして本人が自分の意思で
望んで契約しているという事実が必要となります。
前者が免許証などによる本人確認、後者が押印による意思確認です。
「私は確かにこの契約に同意しました」「自らの意思でこの手続きをします」
はんこを押すことはこのような意思を証する意味があります。

この意思の担保ははんこだけの特権ではなく、アナログでは署名(サイン)もその1つです。
多くの法律で署名(本人の自署)または記名(自署以外の記名)&押印の2つを認めています。
はんこは印鑑証明を添える事で、本人が当該印章を相違なく所有することを証明しています。
※署名認証には公証制度が必要、この事についてはまた改めて記事にしますね。

デジタルではと言うと、一例としてECサイトで買い物をする時を思い浮かべてみてください。
最初にID・メールアドレス・パスワードなどでログイン、これが本人確認ですね。
商品を選び金額や決済方法を確認して最後に「購入する」「同意する」ボタンをクリック、
これがすなわち意思の担保でアナログにおける意思の担保をボタンを押すことで済ませています。
現状では余りにも簡易で、これが大きな契約や例えば不動産購入でしたらいかがでしょうか。
今後は電子認証の普及はますます進む事が予想されますが、デジタルのみとなる事は
デジタルデバイドの観点からも想像が付かず、アナログとデジタルの併用となるでしょう。
いずれにしてもアナログでもデジタルでも契約や手続きにおいて本人確認と意思の担保はセットです。

はんこを押す理由を理解すればする程に、今の急な押印の見直しに恐怖を感じます。
今回のコロナ禍で進むテレワーク、そして行政手続きでの無駄な押印の見直し。
本来はその業務や手続きに意思の担保を取る必要があるのか見定める事が重要です。
可能な限り人との接触を減らす→意思の担保は不要、そんな事はありません。
在宅勤務を進めたい→意思の担保は不要、そんな事はありません。
行政手続きの無駄をなくす→意思の担保は不要、そんな事はありません。

繰り返しますが、見直すべき事は意思の担保が必要なのかどうか。
それに伴い押印の見直しやペーパーレス化、デジタル化と進むのに、
押印をどう無くすかだけを議論しているのはいかがなものでしょうか。
また無くなった押印手続きの数だけを発表するなど愚の骨頂です。

皆さんの身の回りでも、今後は押印の見直しが起きる事が予想されます。
その時には「そこに意思の確認が必要か」を判断して下さいね。
1つのアクションを減らすと言う単純な手間の話では決してありません。
何か起きてから意思の確認をする・・・何か起きてからでは遅いのです。

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