名前と印章の想い出-3

書店の隅にひっそりとたたずむ三文判のスタンド。
キュルキュルとぎこちなく回る音を聞きながら必死に好きな人の名字を探す。
それを見付けた瞬間の胸の痛みは心地良い。
私の初恋の通過点にはそれがあった。
今でもたまに三文判の売り場を目にすると、
そんなことをしている制服姿の女の子が目に浮かぶ。
「三文判売り場」
そこは、ほのかに甘い、初恋の匂いがする。

神奈川県(18歳)

公益社団法人全日本印章業協会
「名前の玉手箱」名前と印章の想い出
58頁より

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