ひとつのこと、と捉えない

行政手続き上での無駄な押印を見直す事が、脱はんこと言う言葉に。
社会からすべてのはんこがなくなる、と言う誤った見解を持つ方が多い中で、
平井大臣と河野大臣による押印廃止のはんこのSNS投稿。
それに反応して猛烈な抗議をした印章業界と議員連盟、そして山梨県知事。
結果、官房長官から「はんこを廃止とすることではない」と言う発言を頂きました。

この一連のやりとりに対して、特に山梨県知事の発言に関してですが、
ネットではどんな反応があるのかと言うと否定的な意見一色です。
・抗議とか情けない、デジタル化が進めばはんこは無くなって当たり前。
・はんこ屋って何様?時代に合うように変われなければ消えて当然。
・恨み言だけ言ってないで次を考えろ、他の業界も必死だ。
・はんこ屋を潰す訳でもないのに、勘違いも甚だしい行為。
・既得権益だけで守られているはんこは時代錯誤、潰れて当然。
SNSはもちろん、YAHOOニュースのコメント欄は特に酷い状態です。
すべてが弁明(と言うか論破)できてしまう様な拙い投稿ばかりなのですが、
問題となっている事はひとつだけなので、そこは伝えさせてください。

一連の物事、全てを「ひとつのこと」として捉えないでください。
幾つも判断すべき事柄があり、そのなかに誤ったマイナスの符号がひとつある、
それだけで物事すべてとして捉えた時に判断や言葉がすべてマイナスになります。
意見を発する時に、物事すべてで論じるのは愚かな行為です。

山梨県知事は大臣の行為について批判をしているのです。
山梨県は印章産業が盛んで、その想いからの行動なのは間違いありません。
ただしそこにはんこの利権を守ろうと言う言葉はありません。
実際に知事の仕事でも不要な押印は省略する、ひとりDXをされています。

業界団体は心血注いでいるはんこを茶化すような行為に声を上げているのです。
政府のデジタル化、不要な押印を見直すことには一言も否定的な意見を言っていません。
当たり前のことです、国民全員の利益を考えて行動する公益社団法人ですから。
ただわたしたちは誇りを傷付けられた、その行為について意見をしているのです。

繰り返しますがデジタル化には賛成、むしろデジタル分野に明るい方がとても多いです。
はんこ屋の仕事ははんこだけでなくゴム印や様々な印刷物など多岐にわたり、
レーザー加工やウェアプリントなどをされている店舗もあります。
デジタル分野に疎い方が多い、純粋なる「はんこ職人」も自身の持つデザイン性の高さや
ものづくりの魅力と言う観点から、手探りですが必死に未来を模索しています。
(多岐にわたる仕事と、はんこの技術向上の矛盾点についてはまた改めて)
匿名性を盾に自身を安全な場所に置き、無責任な発言している方々に言われるまでもありません。

本当に恐ろしく感じるのは政治の力や世論、また匿名でのネットの声です。
ここまで急がなくても全体の利益を考えればデジタル化は間違いなく進むのに、
はんこだけがデジタル化を阻害していると誤解をされている方がまだまだ増えています。
悲しいかな「脱はんこ」「押印廃止」という言葉は解りやすくキャッチーなんです。
それゆえに政権がデジタル化を進めていることを表すキャッチフレーズになってしまっています。

僕は半分は冗談ですが、もう半分は本気で心配していることがあります。
コロナ禍で、自粛せずに外出する人を叩く「自粛警察」が生まれたのは記憶に新しいですよね。
はんこを使う人がいないかを監視する「ハンコ警察」が生まれやしないか、と。
「あの企業はいまだにはんこを使っている」と言われる日がくるかもしれない。
それぞれに理由があって選択しているのに、自身の正義の元に凶器を振り回す。
匿名性を盾にして監視する社会、○○警察がはんこにも・・・と言う恐怖があります。

デジタル化は僕らの生活をより一層便利にしてくれます。
しかしデジタル社会の恐怖から目を背けてはいけない、心からそう思います。
まずはひとつひとつ、しっかりと考えていきましょう。

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