婚姻届や離婚届も押印不要に

河野大臣は11月13日の閣議後の記者会見で、行政手続きで必要な認め印を全廃すると発表しました。
民間から行政機関への申請などで押印が必要な14,992の手続きのうち5,198は廃止済みか廃止を決定、
9,711は廃止の方向で検討し、法改正が必要なものは来年の通常国会に一括法案を提出するとの事です。
残る83は実印などを求めている行政手続きで、こちらは今後も存続の予定です。
結果として認め印は全て撤廃、全体の99%超の政府曰く「不要な押印」がなくなります。

※これで押印廃止、すなわち行政手続き上での不要な押印の見直しには目途がついたと判断し、
 デジタル化の次の段階である書面・対面の撤廃に移行する模様です。
 (押印の廃止→書類・対面の撤廃→常駐・専任義務の廃止→支払いのデジタル化)

今回廃止される手続きの中には、住民票の写しの交付請求や給与所得者の扶養控除(年末調整)、
自動車の継続検査(車検)などの手続きが含まれています。
身近な手続きですと婚姻・離婚届のほか出生や死亡、養子縁組など戸籍に関する各種届け出も含まれます。

今更何を・・・と言われるのを覚悟で申し上げます。
見直すべきは「不要な押印」で「認め印」ではなかったはず。
認め印撤廃ではなく、その手続きに意思の担保が必要か不要かをしっかりと見て頂きたかったです。
現在の手続き上では認め印で良いとしても、重要な押印はあったのではないでしょうか。
(逆も然り、実印を求めていても実際は不要な押印もある可能性は否めません)
政府の求めるスピードに誰もがついていけず、しっかりと議論されたのかは甚だ疑問です。

今回の押印廃止からのデジタル化が滞りなく進めば、役所に出向かなくてもオンラインで
婚姻届や離婚届など様々な戸籍に関する届け出が可能となります。
IT分野での多くの事件をご覧の通り100パーセント完璧なシステムはあり得ません。
オンライン化による戸籍に関する届け出では、システムの隙を突いて自分の意思とは無関係に、
成りすましや自分が知らぬ間に自分に好意を寄せる者や相手配偶者等に届け出がなされてしまい、
結婚や離婚をしていたという事態が起こることも否定できません。

不受理申出制度と言う、本人の意思に基づかず一方的に不当な離婚等を防止する制度もあります。
申出をした本人が窓口に来たことが確認できなかったときは離婚届等の届出は受理されませんが、
利便性を追い求めるあまりに不正な届出が横行してしまうようでは本末転倒です。

法務大臣は「デジタル化の推進を国民の利便性向上という形で進めている」と語っています。
例として婚姻届を挙げていますが、果たして皆さんはその手続きに利便性を求めているのでしょうか。
提出した日を二人の記念日としたり、役所で記念撮影をしたり。
婚姻する上での決意や責任、その意思を表示するのが押印という行為です。
離婚届は婚姻届とは真逆の感情が大きいかもしれませんが、財産や親権など時に婚姻よりも
大きな責任と義務がかかる大変大切な意思の表示です。

果たしてこれらの押印は認め印だからと言って「行政手続き上の無駄な押印」なのでしょうか?
意思の確認が必要か不要か、そこに国民の声は反映されているのでしょうか?
利便性とは逆行する考え方ですが、大切な手続きは利便性のみで計る物ではないと思います。
ひとつでも押印を減らす、そのことが自体が目的となってはいけません。

最後にはんこ屋の勝手な叫びです。
例え面倒でも、例え法改正が必要でも、重要な手続きには実印を求めて欲しいな!

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