日本一を目指す、と言う世界

2021年2月19日投稿

この週末は2年に1度開催される「技能グランプリ」、
職人日本一を決める大会が愛知県で開催されます。
運営や審査に携われている皆さま、このコロナ禍での開催に心から敬意を表します。
そして参加される皆さんにがんばって!とSNSで投稿をしようと思いましたが、
出場当時のことを思い出し溢れる言葉が止まらなかったので改めて記事にしています。

技能グランプリは、日本全国の熟練技能者が技能を競う技能競技大会です。
出場する選手はそれぞれの職種について特級・1級の技能検定に合格した技能士であり、
年齢に関係なく真の日本一を決める技能競技大会として開催されています。

公式WEBサイトでは競技の様子がLIVE配信されます。
WorldSkills Japan(技能グランプリ)
職人の仕事・・・その頂点、その真髄をどうぞご覧ください。

第31回となる今大会は全30職種、はんこ職人は「印章木口彫刻」と言う競技職種です。
課題は30mmと言う賞状に捺されるような大きめの角印に、9文字を彫刻します。
制限時間7時間、9時開始17時前後終了、1日で彫り上げます。
競技会場、その場で7時間通し(食事休憩はありますが;)です。

高い技術力は必須で、身体的にも精神的にも過酷;
当日はもちろんですが、開催2~3か月前の課題発表からの練習がとにかく大変!
7時間競技なので当然ですが練習も7時間かかる、つまり丸1日は使ってしまいます。
また道具の手入れなども含めると、1回通し練習をするのに合計で2日間は使います。
当たり前ですが日々の仕事をしながらで、私はあまりに多くのことを犠牲にしてきました。
それが「日本一を目指す、と言う世界」でした。

僕は神奈川県代表として4回出場しましたが銅賞が最高位でした。
4年前の大会にエントリーしていましたが、直前に先代(父)が他界し出場辞退。
思い返すと6年前の第28回大会が最後となりました。
もちろん今でも出場資格はあるのですが、現実的にとても難しいです。
それは職人である上で法人の経営者であり、子を持つ父であること。
がむしゃらに技術に向き合えたあの頃は、辛くもあったが幸せだったな・・・と。
もちろん父や妻、様々な方の支えがあって出場できていたと今更になって気付きます。
生半可な覚悟では向き合えない、それが「日本一を目指す、と言う世界」でした。

ただ日本一と言う言葉には色々と語弊があるかも知れません。
技能グランプリでの1位=グランプリ、に輝いた方は大会開催数いらっしゃいますし、
全国印章技術大競技や大印展のような全国規模の作品展でのトップ賞もあります。
その技能を公に認められて、現代の名工となる方もいらっしゃいます。
それを十分に理解した上で、敢えて言います。
技能グランプリは「日本一を目指す、と言う世界」、グランプリは日本一です。

今回参加される方々、私が出場した時にも腕を競い合った方もいます。
訓練校(神奈川県印章高等職業訓練校)出身の仲間もいます。
またお名前でしか知らない方や初めて目にするお名前の方もいますが、
親しい親しくない関係なくグランプリを目指す方はみんな同志です。
競い合う立場であっても技術を志す仲間で、苦しみを乗り越えた戦友のような気持ちです。

皆さんが普段通りの力を発揮できることを心から祈念しています。
がんばれ~!!!!!

4回目の出場時は神奈川県選手団の旗手を務めました。
「旗手はグランプリになれない」なんてジンクスも聞きました(笑)、良い思い出です。

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