はんこがテレワークの阻害要因

今春、緊急事態宣言時にテレワークが実現しないのははんこのせいだ!と、
様々なメディアで報道をされた事は記憶に新しいと思います。
もう半年前の事ですが、ちょっとおさらいです。

まず前提として。
はんこを押す、それは本人確認ではなく「意思の担保」が目的です。
すなわち書類の内容を承諾した証拠として相手に差し出すのが押印。
※はんこを忘れて追い返されたと文句を言う方は、考え方の入り口が間違っています。
この意思の確認を果たすには、アナログでははんこ・サイン・拇印が代表的です。

その上でテレワークの阻害要因は幾つかあります。
1つは業務上、紙が必要不可欠でそれに付随するはんこやサインが
必要な為にテレワークが進まないと言う事。
皆さん理解していると思いますが根本はデジタルとアナログの問題です。
それなのにはんこだけを元凶の様に報じているのは視聴者受けするキャッチな言葉、
はんこをスケープゴートにしているとしか思えません。

2つは社会全てをデジタルにはできないと言う観点。
今、見直しを進めている行政文書をはじめ、様々な証明書類、契約書類、
薬の処方箋、レジのレシート、宅配便の送り状などなど。
テレビ番組の台本であっても紙にプリントアウトしているのが現状です。
それらは原本保管の必要性、使用環境、デジタルデバイドに左右されないなど、
様々な必然性があって、敢えて紙ベースで利用されています。
なぜ敢えてか、それはその方が便利で価値があると判断しているからです。
今すぐに世の中の全てをデジタルに置き換える事はできません。
あわせて付随する認証や決済の行為には必ずはんこやサインが必要となります。

3つは各企業や団体の業務フローの問題である、と言う事。
電子メールのやりとりで済む程度の重要ではない内容を紙文章にして押印をしている。
その為に危険を冒して出勤し押印をしている=はんこがテレワークの阻害要因である。
これは風評被害と言っても過言ではない、的外れにも程がある表現です。
業務フローの見直しは全ての企業や団体で行われるべきです。

最後に、紙文章を使うことによりテレワークが進まない一面は確かにあります。
しかし逆に紙文章をデジタル化したが故にテレワークが不可能になる事もあります。
例えば、生命保険の契約はタブレットでサインするデジタル化が進んでいますが、
契約者本人が目の前でサインする必要があり、テレワークできない業務です。
ネットバンキングも社員が自宅のパソコンから会社の資金移動はできません。
出勤し、会社の決められた端末からサインインし業務を行うしかありません。
他にも個人情報を含む顧客データをコピーし持ち帰ることを許可する企業は
コンプライアンス上の問題が指摘されます。
そもそもデジタル化が進む大企業であればある程にセキュリティの理由で
データ持ち出しや外部端末からのアクセスは厳しくしているはずです。

これからコロナ禍でテレワークがより一層進む事は間違いありません。
ただ「テレワーク推進の阻害要因がすべてはんこ」と言うのは大きな間違いです。
また、どうしてもテレワークができない方々の気持ちを理解する事も必要です。

そもそもテレワークとは遠隔(在宅)勤務を意味しており、=デジタル化ではありません。
必ずしもIT機器やネットワーク使用が必須ではありませんし、
会社の許可を得てはんこを持ち帰り仕事をする事もテレワークの1つのスタイルです。
まぁこれは極端で、まず有り得ない例ですけどね;

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