学校と保護者間の押印見直し
10月20日に文部科学省から、学校と保護者間の押印見直しの発表がされました。
学校と保護者の間で行われている書面のやり取りのデジタル化を進めるため、
その妨げにもなっている保護者の押印の手続きを可能なものから省略するよう求めています。
全国の学校などに出された通知では、電子メールでの配信や双方向の情報伝達が可能な
専用ソフトを活用するなどデジタル化に取り組むよう要請しています。
僕も子を持つ親として、見直しには大賛成です。
共働き世帯が多い昨今、たくさんの書類に目を通すだけでもひと苦労と言う方も多いと思います。
そこに追い打ちをするかの様な「これって必要なの?」と言う押印は本当にひと手間ですよね。
今までの慣習に目を向けて、改善されるのは喜ばしい事です。
しかし、ひと呼吸置いて発表をよく読み考えてみてください。
単純に「はんこ押さなくて済む=ラクチン」と捉えるのは大変危険な事です。
書類を見て確認したと言う証拠が押印、つまり何かしらのアクションが必要です。
アクション=押印、その事を見直すのは必要ですが代わりを考えてはいるのでしょうか。
文部科学省は学校と保護者の負担軽減を目的として業務見直しをしています。
つまりはデジタル化により全体の価値を生み出す事で、決して「押印が悪」ではありません。
見直すべき内容の中には確かにはんこや紙がありますが、今回の発表でも
「デジタル化を妨げているのは押印」と言う敵対構図、完全にミスリードです。
現場である学校と保護者は解っています。
確かに無駄な押印は多い、しかし押印を見直すだけでは目的は達成できない事を。
連絡のデジタル化はメール配信・メールサービス・専用サービスと様々な形で進めていますが、
個人情報保護法やセキュリティ、デジタルデバイドの観点からも簡単には進まないと言う事を。
今までに様々な連絡手段がありましたが、新しい方法に変わる度に苦労している現実を。
また政府の様に専任スタッフがいる訳ではなく、先生方も定期的に人事異動があります。
これは地方行政の現場にも言える事だと思います。
同省からはデジタル化する例としてアンケートフォームやメール配信サービスの活用を促しています。
またデジタル化することで、逆に負担が増えるような場合まで押印の省略を求めておらず、
児童・生徒の健康(アレルギー等)に関わる確認については、保護者の署名を求めるのも
選択肢とするなど具体的な対応は学校側の判断に委ねています。
政府は何を提供する訳でもなく結局は現場に任せる、と言う事を堂々と述べています。
平井デジタル改革担当大臣は、閣議のあとの記者会見で、
「学校と家庭の効率的なコミュニケーションはすでに一部で色々なものを使って行っている。
学校現場では、保護者や子どもたち、それに先生が繋がるということが何よりも重要で、
保護者の押印省略などの取り組みはスピードを加速して取り組んで欲しいし、
現場は時代の変化に柔軟に対応してもらいたい」と、こちらもまたスピードだけを要求し、
方法等は全て現場に任せる、と言う事を堂々と述べています。
押印を含めた無駄な業務はどんどん見直していきましょう。
しかし望む姿に到達する為に、大変な苦労をするのは実際に携わる現場の方々です。
今回の学校と保護者間の押印見直しについて、政府が本気で進めたいのなら、
(持論ですが)全児童・生徒の家庭に連絡用の専用端末を提供する事が必須だと思います。
実案を考えず、また必要なコストの計算もせず、ただただ現場任せの要求・要請。
この様な政府の発言や姿勢はいかがなものでしょうか。
またその為に意図して「はんこ」のみを悪としたのなら、声を大にして意見をします。
政府の発表だけを見ると誰もが賛同する内容です。
しかし僕たちは表面だけを見ずにしっかりと内容を判断していく事が大切です。
お便りに確認のはんこを押すか否か、決してそれのみの問題では無いのです。